<テーマ193>DV関係~コミュニケーション~やりとり分析(1)

<テーマ193>DV関係~コミュニケーション~やりとり分析(1)

(193―1)事例について
(193―2)クライアントについて
(193―3)メールやりとり―本文


(193―1)事例について
 DV問題、あるいはその他の人間関係の問題でカウンセリングを受けに来るクライアントに対して、問題となっている人との間でどのようなコミュニケーションがなされているのかを知りたいと思うことがあります。
 大抵の人はあまり明確にそれを再現することができません。特にDVなどの問題では、そのやりとりがとても曖昧にしか再現してもらえないことも多いのです。
 また、当事者間でどのようなやりとりが行われていたかを教えてほしいとお願いすると、よく分からないとおっしゃるクライアントもおられます。それがそんなに大事なことなのかと思われている方も多いようであります。
 そのような中で、ある一人のクライアントが夫とのメールのやりとりをコピーして持参してくださいました。本項ではそのメールのやりとりを掲載しますが、これはそのクライアントに許可を得ています。そして、必要なのは会話の内容と流れでありますので、できるだけ個人が特定されそうな情報は変更を加えています。また、言葉使い等に関しても私の側で一部訂正しております。
 メールの発言にはすべて番号が付してあります。番号の後にその発言者を示しています。これは夫と妻と表記し、後の考察においても同じ表記で統一します。「 」内は発言内容であり、その後の( )は時間を示しています。開始時点をXとし、例えば(X~5)とあれば開始してから5分後の発言を示しています。
 掲載するのは、その時のメールのやりとりの約3分の2ほどであります。たいへん長いやりとりが行われたので、後半部は割愛させていただきます。
 一番重要な点は、このやりとりは現実の夫婦に交わされたものであり、真剣にこの問題を考えようとする人にだけ読んでもらいたいと思います。興味本位で読もうとされる方はご遠慮ください。そして、私がこのやりとりを掲載し、それを考察するのは、やりとりを通して見えてくるものがたくさんあるという点を示すことであり、個々の夫婦が自分たちのコミュニケーションを振り返る際の手引きとなればいいと願っているからであります。

(193―2)クライアントについて
 クライアントは妻の方です。この夫婦は結婚後、夫の転勤の関係で地方で生活していました。子供が生まれ、三人で暮らしていました。夫の暴力、暴言に耐えかねて、妻は子供を連れて家を出ます。彼女の生まれ育った実家のある関西に戻り、そうした縁で私のカウンセリングを受けに来られたのでした。
 これからこの夫婦が交わしたメールのやりとりを見てもらうのですが、その時点の状況をよく頭に入れておいてほしいのです。
 まず、妻の方はこの時点で既に離婚へと決意を固めていました。夫は離婚を承諾せず、話し合いが平行線を辿っていました。妻と子供は妻の実家に戻っていて、転勤先には夫が一人で住んでいます。夫も仕事から離れられないので、話し合いは電話かメールでなされていました。

(193―3)メールやりとり―本文
1・妻「明日、電話する約束だったけれど、都合が悪くなったので、もし、今夜でもよけ れば話し合いたいと思います。伝えたいことなんかもあるので。子供が寝てからの方がゆっくり話せると思います」(X時)
2・夫「分かった。一時間後に電話する」(X~1)
3・妻「はい、お願いします」(X~2)
4・夫「今、電話してもいい?」(X~10)
5・妻「はい、お願いします」(X~10)
(電話で話し合う)
6・夫「俺もこれからどうするか、本気で考えます」(X~48)
7・妻「こんな私でごめんなさい。なかなか今回は乗り越えられなくて」(X~52)
8・夫「やっぱり家に帰ってから電話したかった」(X~52)

9・妻「わたし、あなたが外出中とは知らなかったから」(X~54)
10・夫「近くにM君がいて、話し辛かったわ」(X~55)
11・妻「途中で話を止めたらよかったわね」(X~55)
12・妻「ごめんなさい」(X~55)

13・夫「やっぱり会社の中では(噂が)広まるから」(X~56)
14・夫「俺も幹部だから」(X~56)
15・夫「責めてないから」(X~56)
16・夫「ごめん」(X~56)

17・妻「不敏かけてるって思う。辛い気持ちにさせて、ごめん」(X~59)
18・夫「いいよ。今度からは時間を決めて話をしような」(X~59)
19・妻「そうだね。そうしようね」(X~60)
20・夫「夫婦が離れ離れなのは良くないね」(X~61)
21・妻「分かっているけど、今は一緒に住めない」(X~61)
22・妻「私にとっても大事な時だから」(X~61)
23・妻「付き合わせてしまって悪いと思う。ごめん」(X~62)

24・夫「その言葉聞いてきたけど、大事な時っていうのが、どういう意味なのかわからない」(X~64)
25・妻「私が決心できていないということ」(X~64)
26・夫「それも前向きな意味なのかどうか」(X~64)
27・妻「今の私ではこのままやっていく自信がないということ」(X~65)
28・妻「前向きかどうかも自分では分からない」(X~65)
29・妻「自分がどうしたいのかも、正直、分からない」(X~65)
30・妻「ごめんなさい」(X~65)

31・夫「もう無理しなくていいよ」(X~66)
32・妻「そういう意味ではないの」(X~66)
33・夫「自分に正直になって」(X~66)
34・妻「無理しているわけではないから」(X~66)
35・妻「正直になっても分からないから」(X~66)

36・夫「俺もあんな病気初めてだったし」(X~67)
37・妻「今のような状況で決めて、後悔したくないの」(X~67)
38・妻「病気にさせてごめん」(X~67)

39・夫「だいぶん考えて」(X~67)
40・夫「反省もした」(X~67)
41・夫「でも、伝わらないから」(X~68)

42・妻「伝わっているよ」(X~69)
43・妻「でも、まだ今は動けない」(X~69)
44・妻「ちゃんと伝わっているけれど、それでも今はどうにもできない」(X~69)

45・夫「俺も考える」(X~69)
46・夫「これからのことを」(X~70)
47・夫「もう一度。」(X~70)
48・夫「君の」(X~70)
49・夫「考えもわかった」(X~70)
50・夫「今日は予想外の」(X~71)
51・夫「話だったから、悪かった」(X~71)

52・妻「私のほうこそ、明日の予定を今日に変えてごめん」(X~72)
53・妻「夕方は家族がいるので話し辛いと思ったの」(X~72)
54・妻「子供も寝て、家族も部屋に戻っている今がいいと思った」(X~73)
55・妻「いきなりでごめん」(X~73)

56・夫「そういう時は、明日の夜に変更って」(X~73)
57・夫「言ってくれたらいいよ」(X~73)
58・夫「今日は珍しく用事が入っていて」(X~74)

59・妻「あなたの状況も分からなかったから、その判断もできなかった。ごめん」(X~74)
60・夫「明日でお願いしていた」(X~74)
61・妻「明日にしていれば良かった」(X~75)
62・妻「タイミング悪くて」(X~75)
63・妻「ごめん」(X~75)

64・夫「大丈夫」(X~75)
65・夫「M君に泣き声」(X~76)
66・夫「聞かれるのも」(X~76)
67・夫「嫌でした」(X~76)
68・夫「ごめんな」(X~76)
69・夫「でも、分かってほしい」(X~77)

70・妻「うん、それは分かるよ」(X~77)
71・妻「ごめん」(X~77)

72・夫「理解してくれてありがとう」(X~79)
73・妻「こちらこそ、辛い状態の中で理解を示してくれて、ありがとう」(X~80)
74・夫「でも、けじめはつけてな」(X~81)
75・妻「なんの?」(X~81)
76・夫「永遠にこのままじゃあかんで」(X~82)
77・妻「何とも言えないけれど、頑張ってみます」(X~83)
78・夫「俺がもたないかもしれない」(X~84)
79・夫「大分、厳しいな」(X~84)

80・妻「分かりました」
81・妻「今日はごめん。ありがとう」

82・夫「気分が一気に落ちてしまったわ」
83・夫「俺、ずっと一人だし」

84・妻「私も落ちてるわ」
85・妻「一人なのは申し訳ないと思います」
86・妻「ごめんなさい」

87・夫「今日、久しぶりに気分転換をして、その帰りやったから」
88・妻「知らなくてごめんね」
89・夫「言っておけば」
90・夫「良かったな」

91・妻「仕方がなかったの」
92・妻「ごめん」
93・妻「今はそれしか言えない」

94・夫「話の内容は分かったから」
95・夫「それは良かった」

96・妻「ありがとう」
97・夫「でも、頑固やな」
98・夫「本当に」
99・夫「こうと決めたら変えないからな」

100・妻「わたしと一緒だと迷惑かけるね」
101・妻「ごめんね」
102・妻「今はこれしかできない」
103・妻「ごめん」

104・夫「いつまで続けるの?」
105・妻「わからない」
106・妻「今は分からない」

107・夫「それがしんどい」
108・妻「ごめん」
109・夫「子供のK(子供の名前)は一度だけなのに」
110・夫「これが罰なのかな」

111・妻「分かっているけど」
112・妻「K一人でそちらには行けないから」
113・妻「ごめんなさい」

114・夫「もういいわ」
115・妻「また(子供の)いい写真が撮れたら送ります」
116・妻「ごめんね」

117・夫「二重生活も」
118・夫「限界がわるわ」
119・夫「分かってな」
120・夫「そこのところは」

121・妻「でも一緒にいてだめになるより、少しでも可能性を見つけたいと思うの」
122・妻「必要な時間だと理解してください」
123・妻「勝手を言ってごめんなさい」
124・妻「いろいろありがとう」

125・夫「でも、この二人、タイミングが悪いな」
126・妻「変わらないかな」
127・夫「ずっと車にいてたから首も痛くなってきた」
128・妻「では、ゆっくり休んでください」
129・夫「なんか、変わらないな」
130・夫「約束かな」

131・妻「長々とごめんなさい」
132・妻「ゆっくりしてください」
133・妻「また必要なものがあったら知らせてください」
134・妻「今日はありがとう」
135・妻「電話のこともごめんなさい。では子供の部屋に戻りますので」

136・夫「こっち(夫の赴任先)に来た時に話したらいい内容だと思うで」
137・夫「気持ちがないのも分かるけどな、もうちょっと考えてほしいわ」

138・妻「今、言っておかないと後悔すると思ったから」
139・妻「あなたにはあなたの考えがあるように」
140・妻「わたしにもあるから」

(以下、省略)

(文責:寺戸順司)