<9-1>親とのカウンセリング

<9-1>親とのカウンセリング

(ある母親の言葉)
「辛くはないです。ただ、今までやってみたことのないことをやりなさいって言われているようで、果たしてそれができるかどうか、心配で…」
 ある母親の言葉です。カウンセリングを終えて、なにか辛そうに見えたのでお尋ねしたところ、上記のような言葉が返ってきたのでした。母親のこの言葉は、私が本章で取り上げたいと思っていることをほとんど述べてくれています。

(子供のことで親が相談に来る)
 本章は親とのカウンセリングという見出しをつけています。字義通り、親とのカウンセリングに関して、私の経験したところのもの、私の見解を述べていくことにします。
 カウンセリングというと、何か問題を抱えている人が受けるものだというイメージを持たれている方も多いかと思います。もちろん、そのようなケースも多いのですが、それは全体の半分のことなのです。後の半分は問題を抱えているとみなされる人の周囲の人が受けるのです。
 その周囲の人とは、家族が圧倒的に多く、私のところでは親が来談されるのです。子供のことで親が相談に来られるのです。
また、親といっても、私がお会いするのは大部分が母親であります。父親が来談されるケースもないわけではありませんが、数としては母親の方が多いのです。来談するのが母親であるか父親であるか、その違いは子供の問題の種類よりも、その家族で起きていることの方に関係が深いと私は考えています。つまり、その家族力動によって違ってくるということです。それが母親であろうと父親であろうと、子供の問題で一番苦しめられている人、もしくは一番痛めつけられている人が来談されるのです。このことに関しては後々取り上げることになると思います。

(親の安心感・安定感)
 親カウンセリングでは、最初から最後まで親の安心と安定を取り戻すことが目標となります。子供が変わるかどうかは二の次なのです。後に「過程」のところで詳述する予定をしておりますが、この視点だけは見失わないようにしていただきたく思います。子供のことで来談されたとしても、焦点は親にあり、親の安心が増していくことがこのカウンセリングの到達点になるということです。
 従って、子供をどうにかしてくれると期待する親、あるいは親がどうにかなってくれると期待する子供に対して、その期待は裏切られるということは覚悟していただきたいと思います。それがイヤだということであれば、その期待を満たしてくれる臨床家をお探しになられれば結構であります。私はその期待に応じることはできません。
 子供は自分の問題に対して、親は親子の問題に対して、どちらも傍観者の立場に立つことはできないのです。誰かが自分たちの問題をどうにかしてくれるなどとは決して思わないでいただきたいのです。

(傍観者ではいられない)
 私の言うことが厳しいと感じられるのではないかと私は危惧するのですが、このことがとても大事なことなのです。いずれ事例などを通して見ていこうと思うのですが、親が子供並びに家族に背を向けなくなると、何かが家族内で動いていくのです。親が傍観者の立場を放棄するだけでも親子間に何かの違いが生まれるのです。
 傍観者の立場とは、例えば、それは子供の問題なので自分は関係がないとか、自分がカウンセリングを受けても意味がないと考える親であります。子供をカウンセリングに送り込めばそれで自分の役目は終わったと考える親であります。子供に問題が生じた、でも自分は悪くないと自分の罪責ばかりを気に病んで、子供を手放す親であります。
 一部の親たちはあくまでも傍観者の立場に留まるのです。手っ取り早く処理して、子供の問題を丸投げしたいのです。私はそれを引き受けません。そして、そういう親たちはさっさと私に見切りをつけて、他所へ行かれるのです。それで結構であります。その人たちとの経験は本章では取り上げられることはないでしょう。
 傍観者の立場を放棄した親たちとの経験に基づいて、本章は記述されています。本章は「親とのカウンセリング」というタイトルですが、この「親」はさらに限定されるわけです。一部の親たちのことについて述べることができるのであって、あらゆる親に該当するといった内容にはならないでしょう。
 傍観者立場を維持される親たちのことに関しては、私は述べることがありません。その人たちから経験できることがほとんどないからであります。

(本章の構成)
 さて、本章の構成でありますが、次節において親カウンセリングに関するいくつかのトピックを取り上げたいと思います。ここでは私の親カウンセリングの原点となった経験も綴らせてもらおうと考えています。
 続いて親カウンセリングの過程を述べようと思います。これは最初におおまかなアウトラインを提示して、その後で各段階、各様相について詳述することにします。カウンセリングを希望する親たちは最初にこの部分をお読みになられるとよろしいかと思います。自分の求めているものがあるかどうか、きっとお分かりになられると思います。
 その後に再びいくつかのトピックを取り上げようと思います。ここでは親たちの誤りを取り上げることになると思います。そのことに関して、この場で少し補足しておきましょう。
カウンセリングに訪れる親たちの大部分は親として立派に子育てをしてきているのです。そこは間違えてはいけない部分なのです。子供の問題は親に原因があるなどといった短絡的で未熟な思考をするつもりは私にはありません。こういう思考は未熟な子供に支持されるものなのです。ただ、親も人間なので、知らず知らずのうちに間違いをしてしまったり、その時々の状況に影響されてしまったりするのです。お互いの間で起きていることを見落としてしまったり、経験したことのない場面に直面して適切な行動が取れなかったりするのです。要するに、人間であればやってしまうような失敗をしてしまうのですが、それは親に問題があるということを証明しているわけではないのです。親に罪を問うわけではなくて、うっかりとやってしまうミスがあるのならそれには気づいていきましょうという提案を私はしたいのです。そうした親たちのミスが取り上げられることになるでしょう。
 最後にいくつかの事例を掲載することができればと考えています。できれば複数の事例を挙げたいと考えています。親カウンセリングと一言で言っても、その内容はそれぞれの親子によって大きく違ってくるということを見てもらいたいと思うからであります。
 以上のような構成を現段階では考えています。どれだけのことが書けるかは未定ですが、私がお伝えできることはできる限りお伝えしていこうと思う次第であります。

 尚、原稿が完成しだい公開していくことにしますので、公開の順が不同になると思います。

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)