<8-4-1>上手くいかない夫婦~概説

<8-4-1>上手く行かない夫婦~概説

(夫婦にはパターンがある)
 仕事柄、上手く行かない夫婦を見る機会が私には多いのですが、幾組ものそうした夫婦を見ていると、そこにいくつかの傾向を見て取ることができるように私には感じられています。それは夫婦のパターンと言い換えてもいいでしょう。つまり、上手く行かない夫婦にはいくつかのパターンとか傾向があるようだ、ということであります。
 ここで言うパターンや傾向というのは、上手く行かない夫婦はこういう行動をすることが多いとか、このような場面でこのように考えることが多いとか、この時期にこういう出来事を経験することが多いとかいったことであります。それぞれの夫婦にはそれぞれの状況とか背景があるとしても、上手くいかない夫婦はけっこう同じようなことをやり、同じようなことを考えるものである、というわけであります。本節以後、それらのパターンを綴っていくことにします。
 ところで、上手く行かない夫婦にはこういうパターンが見られるということを述べようとするなら、それを上手く行っている夫婦と比較しなければなりません。上手く行っている夫婦には見られないけれど、上手く行かない夫婦にはこれが見られるといったデータがなければこのようなことは言えないわけであります。そのことは私も重々承知しているのでありますが、私には上手くいっている夫婦に関しての情報や資料が皆無であるので、ここで述べることはすべて私の主観的かつ個人的な見解であることをお断りしておきます。読む人によっては、それは私の偏見であると思われるような箇所もあるかもしれませんが、ご了承願いたく思います。
 また、パターンや傾向というものは、多数のサンプルからの抽象であります。多くの人から、共通する一部分だけを抜き出したものであり、そのため、その一部分で個人全体を評価してはいけないのであります。何人もの人から同じ傾向が抽出されたとしても、その傾向は個々人の一部であるにすぎず、個々人の体験はそれぞれ違うものであります。決して過度に一般化しないように注意する必要があります。
 加えて、これから挙げていくパターンの一つに該当するからといって、それだけで自分たち夫婦を評価しないようにもお願いしたいところであります。一つのパターンとか傾向だけで夫婦は決定されるものではありません。夫婦を理解しようと思えばもっとトータルに考察しなければならないのであります。
 これを読む人はおそらく夫婦に関して何か気になる事柄を抱えている人であるでしょう。だからこんなページが検索で引っかかったのでしょう。ここには読む人の求めているような「答え」など記されていないでしょうし、そういうものを期待して読まれると肩すかしをくうことになるでしょう。その点は予め申し上げておく次第であります。自分たち夫婦を振り返る一つの手がかりにでもなれば私としては本望でありますし、それ以上でもそれ以下でもないページになることを願っております。

(独り者の利点)
 さて、私は生まれてから一度も結婚なるものをしたことがありません。夫婦というものを経験したこともないのです。開業初期のころはこれは不利なことであると信じていました。夫婦経験のないカウンセラーにクライアントが夫婦問題を相談に来られるのです。正直に言えば、私は彼らの話を聞く資格は無いという気持ちに襲われたりもしましたし、あなたの選んだカウンセラーが私で申し訳ないという思いに駆られることもありました。
 あれから十数年、今では独り者であることの利点も見えるようになっています。自分にその経験がないということは、自分の経験を参照できないという不利だけでなく、自分の経験に妨害されないという利点もあるわけで、徐々にそちらの利点の方も見えてくるようになったのでした。
 従って、もし私に反論したい人は次のように言えば十分です。「お前にそれができるのか」「お前はそれをしているのか」と。私は素直に負けを認めます。私はそれができるかどうか自分でも分からないし、経験したこともありません。それならお前は自分に経験のないことを言うのかと問われれば、私はそれが私の仕事ですとお答えするしかありません。病気について論じることができるのは、患者ではなく、医者であります。患者は病気の体験は語ることができても、病気そのものを語ることは困難でありましょう。少なくとも、その患者さんがその病気の真っただ中にいる間は困難でありましょう。それと同じことであります。自分にその経験がないから、あるいは自分がその問題の渦中にいないから、その問題に対して公正な考察も可能になると私は信じています。
 結局のところ、一長一短がどちらにもあるのです。経験者の述べることはある観点としては正しいものを含み、別の観点のものが欠落しているかもしれません。同じことが未経験者の叙述においても言えるのであります。両者から学ぶのがもっとも良いであろうと私は思うのです。ある病気について知ろうと思えば、その病気に罹患した患者さんの言葉とその病気に取り組んでいる医師の言葉と、その両方に耳を傾けて学ぶのが良いであろうということです。経験者の言うことしか信用できず、経験のない人の言うことは信じられないという人は、その人の了見の狭さを表すものであると私は考えています。未経験者の説として本ページを活用されるのもよろしいかと思います。
 これを読む人は夫婦に関して何か問題を抱えているのでしょう。おそらくいくつものサイトを閲覧して回ったことでありましょう。私のサイトも複数の資料の一つにしてもらえると幸いに思うのです。私を盲信しなくてもいいし、私の観点と他の専門家さんの観点と読む人の中で総合されていけばいいと私は思います。

(問題の有無ではなく、克服の有無)
 さて、記述の順序が逆になりましたが、「上手くいかない夫婦」とは問題を抱えてしまっている夫婦といった程度の意味で把握していただければけっこうであります。当面はそれくらいの定義で十分であります。これを厳密に定義しようとすると煩雑な記述を重ねなければならなくなるからであります。
 ただし、上手くいく夫婦でも問題を抱えてしまうことはあります。問題を抱えてしまうということに関しては、上手くいく夫婦も上手くいかない夫婦も違いはなりのです。
 そこでもう一つの視点が必要になります。「問題を抱える」ことだけではなく、「その問題を処理・解消・克服することが困難である」という視点であります。本節で「上手くいかない夫婦」という場合、前者も重要なのでありますが、後者のウエイトがより大きいということを念頭に置いていただきたく思います。
 つまり、問題の有無が問題なのではなく、問題の克服の有無が問題になるわけであります。そして克服されていない問題が、そのまま夫婦関係に持ち越されてしまうこともよく見かけられるのであります。
 それでは上手く行かない夫婦に見られる(と私が経験している)パターンや傾向をいくつかのテーマに分けて、それぞれを個別に取り上げていくことにしましょう。あくまでも私の個人的見解であり、クライアントとの経験に基づいて考えたことであります。何か科学的な実証性というようなものは期待しないでいただきたく思います。

(文責:寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)