<5-2>初回面接~面接(1)

<5-2>初回面接:面接(1)

 では、今からA氏のカウンセリングを見ていくことにしましょう。
 なお、段落末、文末の( )内の数字は、後の解説で必要になるものであります。解説の際に、当該箇所を示すのに用いられるものであり、ここでは気になさらなくて結構であります。

 最初の接触は電話でした。私が電話に出ると、「カウンセリングの予約をお願いします」と、男性のしっかりした声が応じました。それがA氏でした。言葉つきは丁寧で、声はしっかりしていて、落ち着いた感じを私は受けました。双方のスケジュールの都合で、約5日後の面接が決定しました。(1)
 ところが、予約した当日、急遽、仕事で残業することになったので予約の変更をお願いしたいとA氏から連絡が入りました。私は、少々遅れても構いませんよと伝えたのですが、おそらく深夜までかかりそうだという返事でしたので、さらに一週間後に延期されたのでした。(2)
 一週間後の予約当日、時間通りにA氏は来室されました。私の前に現れたのは、短髪で、体格が良く、快活なスポーツマンという印象を受ける男性でした。早速、私は面接申込用紙に記入をお願いします。氏名、年齢、住所、連絡先と、丁寧な筆記でA氏は綴ります。その字体にも力強い感じが受け取れます。それによるとA氏は大阪在住、30代後半の男性ということでした。(3)
 私も席について、簡単な自己紹介をし、カウンセリングに関しての説明をします。それから面接開始となりました。

 できるだけ実際の面接場面を掲載したいと思いますので、ここからA氏とのやりとりを記述します。このやりとりは、正確なものではありません。発言と発言の間には沈黙時間もあったりするのですが、それらの情報は省いています。それぞれの発言も枝葉末葉を切り落として、かなり簡略化してあります。それは各発言の要点を明確にするためであり、それによって面接の流れを把握しやすくするためであります。

 私は「どんなことからでもどうぞ」と面接を開始します。
 A氏「どんなことからでもって・・・カウンセリングって初めてで、何を話したらいいのかわからない・・・(沈黙)」(4)
 私「カウンセリングを受けるのは初めてなんですね。今、この場で、緊張することや、不安に思うことが何かあるのでしょうか」(5)
 A氏「少し緊張はしてるけど・・・なかなか、話すということが苦手で・・・(沈黙)」(6)
 私「そうなんですね。では、取りあえず、ここに来ることになった出来事から話してみてはいかがでしょうか」(7)
 A氏「ここに来ることになったことですか・・・え~と・・・つまり、何て言うんでしょう・・・その・・・世間一般でいうところのDVと言うんですか・・・そのDVの「加害者」だということで・・・その・・・」(A氏、話しにくそうにしている)(8)
 私「そう、あなたがDVの「加害者」だって、誰かがそう言うのですね(誰かがを強調する)」(9)
 A氏「そうなんです(少し顔が輝く)。妻がそう言うんです」(10)
 私「Aさんはそれについてどう思っているのでしょうか」(11)
 A氏「DVと言われれば、それはそれで正しいと思うし、でも、何か、こう・・・」(12)
 私「納得できないとか、腑に落ちないというか、煮え切らないというか、」(13)
 A氏「ええ、そんな感じでもあるんです」(14)
 私「もう少し、詳しく聞かせてもらうわけにはいかないでしょうか」(15)
 A氏「詳しくですか(困った様子)・・・その、妻が暴れるので、それを止めなければいけないと思い、つい、力づくでやってしまうんです。いけないとは思いながら、力づくでやってしまうんです」(16)
 私「奥さんはそれをDVだと言っているのですね」(17)
 A氏「(微笑む)そうなんです。いつも、私が力づくで妻を抑え込んでしまうんです。妻はそれをDVだと言うのです」(18)
 私「そうしなければならない、よっぽどな事情があるんですね」(19)
 A氏「(微笑んで)ホント、激しいんですよ、妻が暴れだすと」(20)
 私「奥さんに暴れられると、あなたがホントに困るのですね」(21)
 A氏「ホントに凄いんですよ。その辺がメチャメチャになるし、子供にも影響を与えてしまうんじゃないかとも思うし。それで、早く妻を鎮めなければと思ってしまうんですね。それで、つい、手を上げてしまうんです」(22)
 私「手を上げてしまうというのは」(23)
 A氏「つまり、妻を叩いてしまうんです」(24)(この辺りで開始20分が経過)
 私「あなたは奥さんを叩いてしまったんですね。本当は叩きたくないんですね。それを何とかしたいと思うのですね」(25)
 A氏「そうなんです。でも、どうしたらよいのかわからなくて・・・(困惑している様子)」(26)
 私「どうしたらいいかって思うと、困ってしまうようですね。どんなふうになることがAさんにとって一番望ましいことなのでしょうか」(27)
 A氏「よく分からない。とにかく、妻に手を上げることがなくなればいいと思う」(28)
 私「妻に手を上げなくなる、それがAさんにとって本当に最善なことでしょうか、それでAさんは幸せだと感じるのでしょうか」(29)
 A氏「自分のことは分からない。本当は、どうしたいかも分からない。ただ、当面は、このDVがなくなればそれでいい」(30)
 私「AさんはDVなんて嫌だと感じているんですね。それで早急にこの問題がなくなればいいって思うのですね」(31)
 A氏「そうなんです」(32)
 私「あなたが力づくで奥さんを抑えないといけないって思う時、あなたにどういうことが起きるのでしょうね」(33)
 A氏「よくわからない」(34)
 私「カッとなっているのでしょうか」(35)
 A氏「多少はそれもある」(36)
 私「それだけでもない、もっと別な気持ちもあるということでしょうか」(37)
 A氏「(考えて)訳が分からなくなるような感じなんです」(38)
 私「訳が分からなくなるような感じになるんですね。もう少し、その辺りを丁寧に見ていく必要がありそうですね」(39)
 A氏「そう思います。でも、自分でも分からないんです。分からないから問題になっている、だから分かっていくということが先決だということは納得できるんです。でも、どうしたらいいのか」(40)
 私「それを一緒にやっていきましょう。その前に、私が疑問に思っていることが一つあるのですが、お尋ねしてよろしいでしょうか」(41)

(分量が長くなるので、後半を次節に回します)

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)






平成28年9月9日 公開