<11-2B>ギャンブル問題への条件(2)

<11-2B>ギャンブル問題への条件(2)

 ギャンブル問題でカウンセリングを受けようとお考えの方に、私はいくつかの条件を課そうと思っています。
 最初の条件は「週に1回のカウンセリングを続けること」というものでした。それは前節で述べましたが、本節ではその継続の期間を補足したいと思います。

(二つ目の条件)
 条件
 「週に1回のカウンセリングを3年は継続すること」

 3年という期間を設定したいと思います。もちろん、3年きっちり通う必要はないし、2年で改善できたとすれば、そこで終了しても構わないことではあります。とにかく、3年は続けるという心構えでいてほしいわけであります。
 どうして3年なのか、どうして1年ではダメなのかと問われそうですが、これも私なりに理由があるのです。それを簡単に述べておこうと思います。
 まず、ギャンブル問題を抱える人がカウンセリングを受ける場合、なかなか進展しないというのが一つの特徴であるように私は感じています。
 比較するのも申し訳なく思うのですが、他の問題のクライアントの場合、それも上手く行ったカウンセリングの場合、その人たちが2,3か月目辺りで通過するところのものを、彼らは1年2年とかかることも多いのです。2年もカウンセリングに通ってそこを通過できないという人もおられたのです。彼らのカウンセリングは、なかなか進展しないし、経過が発展しないという傾向があるように思うのです。だから3年くらい続ける気持ちで取り組んでほしいと思うわけであります。

(なぜ展開していかないのか)
 なぜ、彼らのカウンセリングが順調に進展していかないのかという問題は、とても複雑な要因が働いているので、簡潔に述べることが難しいと私は感じています。
 まず、彼らが時間展望の中に生きていないという要因があります。もちろん、すべての人がそうとは言えないし、人によってその程度も異なるのではありますが、彼らは時間展望の観念が乏しいように私は思うのです。その時その時が分断された形で彼らには体験されているようであり、その場を切り抜けるということが、次にどう発展していくかよりも、最重要課題となるような生き方をしているのです。
 ある男性は、ギャンブルのことで叱られるのではないかと、毎回、私に対してビクビクしておられました。私から叱られなければ、彼はホッとしてお帰りになられるのです。いくらカウンセリングを受けても、彼の中には、今日は上手くやりこなしたという観念しか残らないようでした。
 この男性は、少なくともこの時点では、まだギャンブル時代の生き方を継続しているのです。その場をなんとかうまく切り抜けることに意識を集中し、カウンセリングでの有益な体験に目が向けられていませんでした。言い換えれば、自分がその場を上手く切り抜けたかどうかだけが、彼の心を占めてしまい、その他の体験に関しては、彼はまったく開かれていない状態だったのです。この一回一回、この一瞬一瞬しか彼にはなかったのでした。

(過去の打消し)
 時間展望ということに関してですが、彼らの場合、過去の経験は今の経験で打ち消されることが多いように私は感じています。昨日の負けは今日の勝ちで打ち消され、今日の勝ちは明日の負けで打ち消されるのです。経験として残っていかないのです。
 おそらく、私のこの考えにも反対意見を述べる人があるだろうと思います。彼らは「勝った時の快感が忘れられない」と言っているではないか、過去の経験が内在化されているではないかと、そのように反論なされる方もいらっしゃるかもしれません。
 私もギャンブル問題を抱える人から決まってその言葉を耳にしました。「勝った時の快感が忘れられない」と彼らは確かに表現します。それが忘れられないので、ギャンブルを止められないのだと言います。しかし、その「快感」は、「勝つ」という領域に属するものではなく、もっと別の領域に属する感情であるように思われるのですが、ここではそこまで触れることをせず、あくまでもこの表現通りに、字面通りに受け取ることにします。
 論を進めましょう。「勝った時の快感が忘れられない」からギャンブルに耽るというのは、実は、その勝った時の経験が内在化されていないことの証拠であるように私には思われるのです。もし、私がそれに「勝った」のであれば、そしてその経験が私の中に内在化され、根付いていれば、私はもはやそれに再び「勝とう」とは思わなくなるのではないかと、私はそのように思うのです。
 つまり、一度「勝った」のであれば、もうそれで十分であり、もう一度それに「勝とう」とは思わなくなるものではないかということなのですが、それはこういうことです。「勝った」という経験が、現実的な経験として内在化されていないと、「あの時、『勝った』けど、それは本当に『勝った』のだろうか、もう一度『勝つ』かどうか試してみないと本当に『勝った』かどうか分からないし、『勝った』という現実感が持てない、あの『勝った』は幻だったんじゃないだろうか」と、そのような思考に流れていくのではないかと私は思うのです。内在化されていないから、それを繰り返し確認しなければならなくなるのではないかと、私はそのように考えています。

(内面化の問題)
 あくまでも私の個人的な印象の域を出ないことでありますが、ギャンブル問題で来談されたクライアントたちは、どこか内在化、内面化していく力が弱いという印象を受けるのです。好ましいことも、それが好ましいものとして彼らの中に内在化せず、それは現在の彼からは切り離された記憶として留まっているように思われるのです。そして、そういう好ましいものは、好ましくないものでいともたやすく打ち消されるのです。
 カウンセリングが上手くいくと、クライアントは好ましい体験や関係を自分のものにしていくようになるのです。その人の心の関係性の部分が生き返ってくるので、関係や相手の望ましい部分に進んで同一化していかれるのです。好ましいものを自分に取り入れていくようになるのです。この過程が、ギャンブル問題の人たちではなかなか生じないという印象を私は受けているのです。
 従って、彼らが好ましい体験、感情、関係を自分のものにしていくためには、通常以上の時間を見込んでいなければならないということになるのです。そういうわけで3年は続けることという条件を付けたわけであります。
 もちろん、3年で改善するとか、3年続ければ後は大丈夫であるとか、そういう保証を示す期間ではないということは御理解していただかなければならないことであります。あくまでも一つの目標として、一つの目安として、3年の心構えをしていただきたいということなのであります。

 さて、最後にここまでの条件を繰り返しておきましょう。

条件「週に1回のカウンセリングを3年は継続すること」

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



平成29年4月26日公開