blog2

2021年3月 5日 金曜日

3月5日:書架より~『買い物しすぎる女たち』を読む(5)

3月5日(金):書架より~『買い物しすぎる女たち』を読む(5)

(第5章・ないがしろにされてきた欲求と未発見の能力)
 いい加減、このシリーズも面白くなくなってきた。本書を読むのも苦痛になってきて、時間の無駄をしているような感覚に陥っている。
 第4章ですでに意味不明の内容が感じられてきたが、本章はさらに意味不明である。限りなく支離滅裂感がある。

 まず、本章では新たな言葉がいくつも使用され始め、しかもそれぞれの言葉の概念規定が不足している。
 フィックスというのは、本書の文脈で言えば、依存症者の依存行為や依存対象と同じようなものとして捉えていいのだろうか。僕はそのつもりで理解した。
 「ハイペース人格」とはなんぞや。何がハイペースなのか不明である。それはその人の心的テンポの速度のことなのか、生活速度のことなのか、よく分からない。
 さらに「ドラマ」なる概念が登場するが、これはその人の自己像であるとか、歴史であるとかいう意味だろうか。それとも、その人が思い描いている理想の人生ということなのだろうか。しかし、どうやらドラマというのは、その出来事に伴う刺激という意味合いが強いようだ。それなら「刺激を求める」と言えば良さそうなものだ。
 最後に創造性ということも出てくるが、これはどういう種類の創造性のことなのだろうか。ここで言う創造性とは何なのか。そこを明確にしないと、ハイペースもドラマ希求も創造性に含まれることになるのではなかろうか。創造性に関しては後でまた取り上げよう。

 さらに、右脳、左脳という脳神話である。思い切り決めつけられているのでいささか腹立たしいほどである。著者によると生後数か月で脳が完成されてしまうかのようだ。それに、脳は全体として働くものであり、補償的な機能もあるのだけれど、そういうのは無視されているようだ。脳の左右よりも、脳の上下、あるいはこういってよければ脳の新旧の方がより重要であると僕は思うのだが、新皮質のことなどこの説明では一切触れられることがないだろう。
 さらに、男性とはこういう脳の持ち主であり、女性はこういう脳をしているというふうに、ここまで言い切っていいものやらどうやら。
 まあ、それはいいとしても、買い物依存の女性は平均的な女性に比べて右脳での活動や技能に優れているという著者の結論はどこから導かれたのか。これは僕が男性脳だからそう言うのではなくて、結論が一気に飛躍した感じがするので指摘したいだけである。

 右脳が創造に関わるというよりも、前無意識領域の活動が創造に関わるというキュビーの説の方が僕にはしっくりくる。また、『創造性と狂気』にはこういう例がいくつも収められているのだけれど、ある科学者が発見をする。その発見は従来信じられてきた事実と相容れない部分がある。偉業を成し遂げた科学者たちが苦戦するのはこの部分である。どちらも正しいとすれば、どこかで整合性が与えられるはずである。ここに創造性が要求されるのだ。従って、創造性とはいかに矛盾を解消して調和をもたらすかというところに発揮されるものだと僕は規定している。ただ新奇なアイデアを出したり、発明したりというのは、それ自体は創造性とは言えないものだと僕は考えている。そのアイデアや発明品が、いかに世界と調和するようにしていくかという点に創造性の根本があると思うわけだ。
 買い物依存は、毎回の買い物で創造的であるかもしれない。買い物するたびに、いかに安くいいものを買うことができるかを創造しているかもしれない。僕の定義によれば、それは創造性ではないということだ。その買い物という行為が、その他の日常の行為といかに調和するようにするかが創造性なのだ。

 さて、上手く仕組まれているものだ。第3章であなたは買い物依存症ですよと不公正なテストで証明され、第4章であなたは機能不全家族で生まれ育ったという筋書きを与えられ、第5章でそういうあなたは特別なのですよと言ってくれるわけだ。地獄を見せて天国を見せるというCM手法みたいだ。
 買い物依存症に陥る女性は、そうでない女性よりも創造的な能力があると言う。創造的に生きればいいというのは、あらゆる「神経症」に該当するアドバイスである。人が「神経症」的になるとは、その生活や人生から知恵が失われることであり、いわば、創造がなくなることであるからである。アルバート・エリスもそういうことを言っている。芸術的な創造活動が分裂病回復の一つの道になり得ることはフロム=ライヒマンもずっと昔に述べているところである。要するに、目新しいことは何も述べられていないのである。

 本章では、あなたは問題を抱えているが、その問題に対してあなたは免疫力を持っており、尚且つ、その免疫力を生かすに必要な能力ももっていますよ、だからその能力を生かす生き方をしましょうと言っているだけなのだ。僕にはあまりに内容の乏しい一章であるように感じられた。 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

カテゴリ一覧

カレンダー

2021年4月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

月別アーカイブ