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2019年5月22日 水曜日

動画広告完成記念コラム(20)

動画広告完成記念コラム(20)

 この広告を企画して製作する際に、実際には20いくつかの問題文を用意した。その内の10個を厳選しようとしたこともあったが、最終的に18個になった。ここからはボツにしたいくつかの問題文を取り上げることにする。

(問19)「今日お願いします」

 これは当日予約する人のことだ。今日予約を取って、今日受けるという人のことだ。
 僕は基本的には当日予約を受け付けない。そこで翌日か二日後辺りで勧めてみる。それでもいいと言う人と今日でなければいけないと言う人とに分かれる。前者のような人がいるので、この問題文を不採用にした。問題になるのは後者のような人である。
 では、当日予約を希望する人が、どうして「治らない人」に属してしまうのか、僕の見解を綴っておこう。

 その人たちが当日予約を求める際に、その日でなければならないという根拠は少ない。ただ、今日、苦しいのである。
 早急になんとかしたいというのであれば、病院を探す方が良いと僕は考えている。カウンセラーを探すよりも、その方がその人の目的に適っているように僕は思う。
 そして、こういう人が当日予約のカウンセリングを受けたとしよう。彼らにとってそれなりに意味はあるのだけど、結局、それだけで終わることの方が多い。僕の以前の経験ではそうだ。
 一回限りのカウンセリングで終わることが多い、つまり継続はしない人たちであることが多いのだ。中には、ずいぶん経ってから二度目のカウンセリングが実現することもある。大抵の場合、以前と同じく当日予約であったりする。
 それで二度目のカウンセリングが実現する。このカウンセリングは彼にとってそれなりに意味はあるけど、やはり、それだけで終わることの方が多い。僕の以前の経験ではそうだ。
 では、彼らは何をしていることになるのか、このような行為が何を意味しているのかということが問題となる。
 彼らは、言ってよければ、苦しくなった時だけ受けに来て、その場限りの安心を得て帰るだけなのである。そして、次に苦しくなるまでの時間稼ぎをしているようなものである。
 従って、この人たちは苦しくなると受け、また苦しくなると受け、ということを延々と繰り返すのである。だからこういう人たちの中には、20数年あちこちで治療を続けてきたが、20数年前から少しも進歩していないというような人もあるわけだ。そういう人も珍しくないのである。

 次にクライアントの意識という点がある。これはカウンセラー側である僕からはよく見えるのだけれど、分かっていただけるかどうかは確信が持てないでいる。伝えることが難しいのだ。
 どういうことかと言うと、当日予約した人と数日先の面接を予約した人とでは、カウンセリングを受けに来た時点での意識に違いがあるということである。後者の方が、自分自身やカウンセリングに対する意識が高いのである。もっとも、これは他の要因、クライアントのパーソナリティや彼のおかれている状況などの要因も関係していると思うので、純粋に予約のことに帰属できるわけではないのだけれど、僕はそういう印象を受けることがある。
 そして、次のような人がおられるのも確かである。その人は2週に一回のペースでカウンセリングを続けていたが、彼がカウンセリングで話すことは直近の数日のことに限られていた。僕が思うに、カウンセリングの予約日が近づいてくると、彼の中でカウンセリングのことが意識に上がってくるのだと思う。そして、次のカウンセリングで何を話そうかと、自分自身のことに意識を集中し、彼の生活において自分自身を注目するようになるのだと思う。
 同じことが僕にも起きる。僕も四六時中クライアントのことを考えて生活しているわけではない。時には意識から離れないクライアントもあるけれど、基本的に、普段の生活ではクライアントのことは考えていないのである。正確に何日前とも断定できないけれど、その人との面接が近づいてくると、その人のことが意識に入ってくるのだ。
 これは、ある意味では準備期間のようなものだと思う。直近の数日のことしか話せないクライアントも、その数日はカウンセリングを受けるための準備に費やされているようなものである。僕もまた然りである。
 当日予約のクライアントにはこの過程が生まれないのだ。カウンセリングが意識野に入ってくる期間がないのである。自分がそのカウンセラーのクライアントになるという自覚なりアイデンティティなりが形成される時間的余裕がないのである。

 最後になるけど、当日予約をする人たちが「治らない人」に属するということの、もっとも簡単な理由がある。それは「待てない」という彼らの傾向である。もっとも簡単な理由であるが、もっとも重大な理由である。
 当日予約を求める人に、僕はそれを断り、1,2日後を勧めてみる。この時の返答は、この人が待つことのできる人であるか待つことのできない人であるかの判断材料の一つにする。もちろん、この一事だけで待てる人か待てない人かを決定するわけではないのだけれど、一応、一つの判断材料として僕の中で保持しておく。
 「治療」に限らず、何事もそうであると僕は思うのだが、進歩や上達は遅々としたものである。進歩や上達が目に見える時もあるけど、そこに至るまで一見すると何も上達していないような日々を送ることになる。時には停滞することもあるし、スランプに陥ることもある。気長に取り組めることが必要であるが、それには「待つことができる」、あるいはその状態に留まることができる「能力」(注1)が求められるのだ。僕はそう考える。
 従って、待つことができる、一つの状態に留まることができる「能力」を有している人の方が、そういう能力を欠く人よりも、より上達・進歩し、より「治癒」していくのである。

 あと、これは僕の個人的な要因であるが、当日予約を引き受けると、僕は自分の予定を変更しなければならなくなる。僕の場合、前日には今日の予定をしっかり組んでいることが多いので、当日予約は急な予定変更を僕に強いるわけだ。これが困るのである。
 そして、急に予定変更したことによって、僕の中で、その人に対する若干の陰性感情が生まれていたりする。おそらく、この感情も妨害的に働いてしまうのだと思うのだけれど、当日予約の人とは、どうも上手くできないのである。
 さらに、こちらが幾分無理をして時間を空けることもあった。僕は確信しているのだけれど、その人のためにそんなことをやっても、その人たちは決して感謝することなんてないのである。当然のことと彼らは受け取るのである。彼らのこの傾向と、当日予約を取りたがる傾向と、そして「治らない人」に属していることも含めて、根本はつながっているものであると僕は考えている。

(注1)一つの状態に留まるとは、生が停滞するという意味ではない。思うように前に進めなくても、その状態に耐えらえるという意味である。誤解を招きかねない表現なので、一言添えておこうと思う。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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