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2018年8月 4日 土曜日

文献の中のクライアントたち(3)

文献の中のクライアントたち(3)

 文献の中のクライアントたちは生きている。現在も生きている人がいるかもしれない。僕はここで引用するためにルールを設けている。まず、日本人のクライアントより外国のクライアントを優先すること。さらに、30年以上前の文献であること。今年が2018年だから、1988年以前に出版された本から抜粋することにしている。
 clはクライアント、( )内は僕の感想や見解

<cl-13> チャールズ 25歳男性 反社会的人格
<cl-14> 男性医師 40歳代初期 精神病質
<cl-15> エドワード 16歳男性 異常性行動


<cl-13> チャールズ 25歳男性 反社会的人格
 チャールズは一人息子だった。両親は教育程度も高く、社会的にも成功している。父親は著名な医師であり、チャールズが子供の頃は多忙であった。母親は社会事業に参画して、やはり多忙であった。そのため、両親が留守の間、チャールズはベビーシッターの世話を受けていた。彼はいつも情緒的に不満足の状態に置かれていた。
 チャールズが8歳の頃、初老のベビーシッターの洋服をすべて持って、家出したことがあった。このベビーシッターは太っていたので、母親の洋服を着ることができず、友人に洋服を届けてもらうまで、チャールズを探しに、外に出ることができなかった。翌日の午後まで、彼女と警察はチャールズを見つけることができなかった。チャールズを見つけたのは、家出の翌日、50マイルも離れた土地で彼が万引きで捕まった時だった。
 両親は頼りになるヘルパーが見つからないのを嘆くばかりで、息子を叱ることもせず、彼が引き起こした問題の多くを不問に付した。そればかりか、両親はそんな時には彼に何かを買い与えたりして、彼のご機嫌を取るという誤った方策を採ってしまった。例えば、新しいベビーシッターを雇う時には、チャールズに新しい玩具を買い与えて、それで彼を買収するのだった。
 4歳の頃からすでに、チャールズは野蛮な行為をしたとして警察に連行されたことがあった。数時間後、両親が警察に呼ばれ、やっと自宅へ帰ることが許されたが、帰宅したチャールズは家の窓ガラスを叩き割った。両親はチャールズのこのような行為を「彼はただ退屈しているからやったのだ」と解釈し、彼の気持ちを引くために新しい玩具を買い与えた。
 在学中の生活はまったく乱れたものとなり、彼は絶えず学校や警察に迷惑をかけていた。頭は決して悪くないのだが、学校の成績は劣等であり、どうにか進級できるという有様だった。
 チャールズが14歳の頃、15歳の少女と二人で車を盗み、家出をしたことがあった。彼らは警察に逮捕され、2ヵ月後に釈放された。自宅に戻った時、チャールズは心を入れ替えて自分の生活を改めると誓う。
 しかし、学校に復学してからの彼の生活は以前と変わらないものとなり、欠席も多く、勉強に対してもなんら努力を示さなかった。
 16歳の時、学校を退学した。母親の宝石を持ち出し、それを売り払って得た金で家出した。その後、数ヶ月、彼はほとんどの時間を刑務所で過ごした。
 出所後、悔い改め、新しい人生を送るべく、彼は実家に帰ってきた。彼はガソリンスタンドで働くようになり、自分の月賦で自動車を購入した。しかし、仕事に対するいい加減な態度のために、彼はガソリンスタンドを解雇される。
 彼は斬新なアイデアや豊富な知識を持っていたため、一見すると頭の良い、活発な青年と見える。そのおかげで彼は新しい職を見つけることができるのだが、どこへ勤めてもすぐに解雇されるのだった。それは彼の気ままな振る舞いや信用の置けない態度のためだった。そうして3ヶ月間に14回も転職したのだった。彼は、初回の分割金を払っただけの自動車を売り払い、その金でまた家出をした。
 その数ヵ月後、チャールズは妻を伴って帰宅した。この妻という女性は、以前は売春婦であり、彼よりも8歳年上だった。彼らは1000マイルもの道のりをヒッチハイクで帰ってきたのだった。
 チャールズが帰ってきた時、ちょうど家では政治家や有名人を招いての会食が開かれていた。チャールズたちの服装はまるでだらしがなく、酒にも酔っていた。二人のあまりにひどい様子に母親は茫然としてしまい、入院しなければならないほどだった。
 父親の激しい失望と落胆のために、彼は再び両親のもとから出て行かなければならなくなった。以後、チャールズの生活は酒と麻薬におぼれたものとなる。
 数週間後、彼は町に住んでいる年上の女性と一緒に暮らすようになった。かつての妻は彼の両親のもとで暮らしていた。
 やがて、彼は家庭生活にも飽きてしまい、この年上女性から、マーケットを開く資金として2000ドル借り、一人で町を出た。その数ヵ月後、600マイルも離れた町から送られたチャールズの手紙を父親が受け取った。それは、巨額のローンの保証人に父親がなっているという連絡の手紙だった。
 (反社会的人格である。衝動的で計画性がなく、常に問題を引き起こし、失敗の連続のような人生を送る。超自我形成が不十分であるか、切り離されており、罪悪感を覚えることはなく、形式的な反省しかできない、そういう人物像が浮かんでくる)


<cl-14> 男性医師 40歳代初期 精神病質 クレックリーによる症例
 彼は才気ある医師であるように見えるが、不審な行動が見られた。
 例えば、彼が時々、うつろな目で見当違いの方を見ていたと、患者は語っている。患者もその家族も、彼が次のような行動を示すとは思ってもいなかった。
 ある時、彼は診察のためにドアを開けたが、彼はそのドアを不安げに揺さぶり、取っ手を必死につかんだ。そして、その取っ手を決して放そうとしなかった。荒々しい息遣いをして、聞き取れないことを彼は呟いていた。やがて、部屋の隅に引っ込んでいた3人の子供にうつろなウインクをして、鋭い薄笑いを浮かべた。その後、彼は床の上にうつぶせになり、片手にドクターバッグを持って、患者の部屋目指して這いだしたのである。身体を左右にゆすって、少しずつ進む。少し進んでは止まり、かすれたような声で動物の鳴き真似をした。このような彼の姿は、周囲の人には沼を這い回るワニに見えたという。この方法で彼は患者のもとへ辿り着いたという。
 この男性の成育歴を遡ると、無意味な愚行が繰り返されていたことが分かった。突然、寝転がったり、真面目な会合の席で非常識な騒ぎを起こしたりした。こうした行為のために、病院での高い地位もいくつか失っている。
 彼はある時、当時何日か続けて泊まっていた売春宿で突飛な行為を行い、それによって怒りと中傷を買い、決まっていた仕事を手放さなければならなくなった。その突飛な行動とは次のものである。彼は、やはり酒好きの友人と一緒にこのお気に入りの隠れ宿に行き、そこで女たちに威張り散らし、怒鳴ったりした。やがて意気投合した4人は、酒を飲み始めた。1時間、あるいはそれ以上の時間、グラスを割り、大声を発し、時折、ドタンバタンといった音も聞こえていたという。その時、鋭い叫び声が家主たちのところまで聞こえてきたので、女中たちは大急ぎで部屋まで行ってみた。そこでは売春婦の一人が胸にタオルを巻きつけて苦しみ叫んでいた。泣きながら、この女性は、この医師が彼女の乳首を噛み切ったことを訴えていた。この事件が起きたとき、二人の男が彼女とベッドにいたが、どちらの男がこの傷害を起こしたかについては、彼女はなんら躊躇なく断言したのだった。
 彼の行為には他にもこういうものがあった。一人で部屋の一室に閉じこもり、酒を飲んで酔っ払い、管理人を起こしたり、家具を壊したり、自殺すると妻に電話をかける。その後も酒を飲み続け、警官と友人がドアをこじ開けて入ってくるまで、彼はそこに篭城していた。
 彼は何度か酒を止めたし、健全でまともな職業に就こうとする意志を表したことがあったが、結局、自分の行為がもたらした様々な問題や事件を反省することはなく、相変わらず、以前と同じようなことを繰り返していたのだった。
 (医師として優秀である一方で、獣的で未熟な人格も有しているといった人だ。やはり、人格内で疎通性がなく、分断されてしまっているという印象を僕は受ける)


<cl-15> エドワード 16歳男性 異常性行動
 エドワードは魅力的だがひ弱な感じの16歳少年だった。ある時、彼は若い女性の部屋に侵入し、女性の下着に排泄しているところを発見され、自宅まで逃走するところを警察に逮捕された。逮捕されたエドワードは精神医学的治療を受けることを薦められた。
 彼の父親は成功したビジネスマンだった。母親は魅力的な女性であり、多くの男性との交際があった。彼女は、若い独身男性と情事を楽しんでいたことを自慢げに話すような女性であった。
 母親はエドワードに対しては限りない愛情と注意を注ぎ、彼が欲しがるものはすべて与えてきた。エドワードが、母親とその独身男性のことに気づき、そのことを母親に尋ねると、「私は彼が好きよ、一緒に乗馬に行くのよ。あなたは子供だから何も知らなくてもいいのよ」と答えた。
 彼には一才年上の兄がいたが、この兄との関係は非常に悪く、兄はいつでもエドワードをいじめ、罵り、残酷な扱いをした。
 精神医学的治療を受けることになったエドワードは、二ヶ月間入院した。当初、彼は非常に防衛的で、自分のことも、その他のことも一切話そうとしなかったし、事件についても認めようとはしなかった。後に、自分の問題が話題になっている時は故意にそうしていたと言う、
 次第に、彼は治療者に対して反応し始める。始めは怒りの感情の表出だった。それはいつでも兄に激しく向けられていた。そして、彼は、「あの時、女性が帰ってきたら、その女性を殺していただろう」と述べるとともに、自分の欲求不満状態を認めた。
 性に関するディスカッションでは、彼の知能の高さに比べると、性に関してははるかに未熟であった。彼は、男性の精液は排尿とともに出され、それが女性の口に入ることにより受胎すると考えていた。彼に対する治療の多くの時間が、このような性に対する誤った知識を修正し、正しい知識を与えることに費やされた。彼はこのアプローチに興味を示し、熱心に学習したのだった。
 その後、病室でのエドワードと他の患者たちの関係がよくなってきた。彼は他の患者たちに可愛がられ、マスコット的存在となった。中でも、25歳の元売春婦の女性と親しくしていたが、彼女の見せる率直な態度は、エドワードをより引き立てることになり、治療場面に多くの資料を提供してくれることになった。
 6ヶ月間の入院を経て、エドワードは退院した。その後は外来治療を受けることを薦められ、両親に伴われ、受診を続けた。
 1年後の追跡調査では、彼は非常によい適応を見せていた。学生生活を楽しみ、ガールフレンドとデートしたりして過ごすようになっていた。
 彼の示した性的混乱には多くの要因が関係していた。母親のあけっぴろげで、挑発的な行動や彼女のエドワードに対する目は、彼の気持ちを圧迫してきた。彼は性に関してはけ口を見出せず、逆に性に対する好奇心と衝動を植えつけてしまった。退院後に分かったところでは、彼は母親に対して強い性意識を抱いており、母親の交際相手に強い嫉妬心を抱いていた。
 父親の示した冷淡な態度は、エドワードに親密な感情を抱かせることはなく、彼の混乱した性の知識を矯正することもなかった。彼は父親を軽蔑していた。見て見ぬ振りをする、馴れ合い的な父親の態度に我慢ができなかったのだ。さらに、彼に対する兄の残酷な取り扱いは、ますます彼の生活を締め付けることになっており、その生活をより混乱させ、耐え切れないものとした。彼は自分を助けてくれるような、頼りになる人が一人としていなかったと感じていた。
 (16歳の少年のケースだが、若いだけに快復も早いという印象が残る。治療は彼にいい経験となったようだ。家庭が耐え難いものであっても、家庭の外での充実は得られるものだと思う)

<テキスト>
『異常心理学』(J・N・ブッチャー)福村出版 より


(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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