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2018年4月 4日 水曜日

4月4日:唯我独断的読書評~『女の平和』(#1050)

4月4日(水):唯我独断的読書表~『女の平和』(アリストパネース)

「女の平和」は、アリストパネースによるギリシャ喜劇で、前411年に上演されたものである。アリストパネースは喜劇作家であると同時に平和主義者でもある。ペロポネーソス戦争の真っ只中において作品を発表し続けてきたことからして、それも当然かもしれない。

 アテーナイとスパルタ(ともにギリシャである)の男たちが戦争に明け暮れている時代、アテーナイの一女性であるリューシトラテーは、アクロポリス(城山)に女たちを集結させる。女と家庭を放り出して男たちは戦争に行ったきり、男にはその後の輝かしい生が待っているとしても、女の生は短い。戦争を終わらせて、男たちを連れ戻すのだ、とリュ―シトラケーが女たちを扇動する。かくして、ギリシャの女たちはすべてアクロポリスに篭城して、セックスストライキを敢行する。
 戦場から凱旋した男たちは、女たちの反旗に最初は抗議するが、性の捌け口のなくなった兵士たちは、股間を大きくしてオロオロするばかりとなる(この辺りに戦争とか兵士に対するパロディが感じられる)。
 一方、立て篭もっている女たちの中にも、男恋しさに脱走を企てようとする者が現れる。リューシトラケーは自分たちが辛いときには男たちも辛いと説得する。
 アテーナイもスパルタも、女たちのストライキに耐えられず、遂に和睦を成立させる。両軍は和睦し、男と女も和解することで幕を閉じる。細部を紐解くともっといくつかの出来事が生じているのだけど、以上が本作の基本的なあらすじである。

 コロス(合唱団)の役割が重要である上に、分かりやすい。男のコロスと女のコロスが別々にその情景における心情などを歌にする。女が抗議し、男はそれに挑む。やがて女が強くなり、男が弱気になる。最後に和解が成立して、男と女の両コロスが一体となって歌う。このコロスのおかげで物語の進展がよく理解できるようになる。

 作品で一つ強調されているのは、男と女の違いである。男は男のやり方で戦争を終わらせようとしているのだ。女は別のやり方で戦争を終わらせることができる、もつれた糸球を解いていくように。男は女のやり方を嘲笑するが、結局、男の方が女たちに降参してしまうところに本作の醍醐味がある。
 さらに、戦争よりも愛が強いというテーマもある。愛(ここでは明らかにセックスであり、ゲスい色彩が濃いのだが)が戦争を終わらせる、もしくはその契機となる。そういうことも本作が訴えている主題の一つであるように感じた。

 本書の唯我独断的評価は4つ星といったところ。悪くはない。ギリシャ劇に特有の構造とか言葉に慣れているともっと面白く読めたかもしれない。詳細な訳注が付されているけど、細かすぎて却って煩わしさがあった。
 まあ、訳注を無視しても、当時のギリシャの情勢をまったく知らなくても、楽しく読めた作品であることに変わりはない。詳細に読み込めばもっといろんな発見があるかもしれないけど、表面を素通りするだけでも楽しい作品だと思う。

テキスト:『女の平和』(アリストパネース) 高津春繁 訳 岩波文庫

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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