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2017年4月14日 金曜日

4月14日:内省録第5回―解説編

内省録:第5回―解説編

(1)二つのことが問題提起されている。一つは一つのことが終わる前に次のことをやってしまうという僕の傾向。もう一つは、自分の書いたものを読み直したり、面接を聞き直したりすること、つまり何らかの形で自分と対面してしまうこと。前者に対しては僕が何かから逃げているのだろうかという疑問が呈される。後者に関しては、これはどの人もそうではないかという一般化が試みられている。

(2)ここで後者のテーマが採択されている。前者はウヤムヤになってしまっている。自分の面接を聞き直すことの辛さが語られる。隠しようもない、ごまかしようもない自分がそこにあるわけであり、僕は自分自身に直面する。

(3)ここでその辛い感情に目を背けている。面接を聴き直し、書き起こすことは面接に上達する手段であり、もう一度それをする必要が感じられると僕は語っている。本当の上達はその辛さを克服することであると僕には思われるのだが、ここでは問題がすり替わっている。

(4)面接の書き起こし作業についての経験が語られる。僕は(2)の辛さからますます遊離している。しかし、一つの問題点、おそらく録音の書き起こし作業にも辛さを克服していく作業にも共通する問題点が語られる。つまり、それをするだけの気力がないということである。

(5)若いころにはその気力があった。今ではそれは失われている。喪失感が述べられている。自分に直面する辛さを経験する代わりに、かつての気力が失われたという喪失感を経験しているのだと思う。別の言い方をすれば、あの頃の気力があれば、今頃、自分にもっと直面できていたのにということである。これは憧憬であると同時に、ある種の問題のすり替えが潜んでいるように思う。

(6)先の喪失感を引きずる。かつてほど本が読めなくなったという形で喪失感情を続けている。

(7)ここで気力の喪失に対して一つの合理化が試みられている。それは読み方が変わったのだということになっている。しかし、この合理化は喪失感を埋め合わせるほどの力を有していなかった。

(8)合理化の失敗から、問題は新しいテーマを迎える。僕の中にある激しいものというテーマが登場する。合理化が成功していれば、具体的の本の読み方の説明とかをしていたかもしれないし、この本はこんな風にして読んだといった話を展開していたかもしれない。合理化が不成功だったおかげで、話が一段と深まったわけである。

(9)僕の中の激しい奴が現れる場面を述べる。目標を立てた時のことである。

(10)上述の場面の具体例を挙げようとするが、その背景となる部分から述べている。この激しい奴は兄の存在とコンステレートしていることが窺われる。

(11)兄と同じ土俵で勝負しようとしていた僕がいる。この激しい奴は僕の自己放棄から成り立っているようだ。僕は僕の人生を放棄し、兄の人生を生きるようになっている。

(12)ここに一つの不運があったと言うべきなのだろうけど、兄と同じ土俵で勝負するつもりで入部したのに、それがとても叶えられそうにないという状況があったわけだ。

(13)兄の記録を抜くという目標から、兄と同じように3年間続けるという目標に鞍替えするしかなかった。今から思うと相当な執念だと思う。叶えられそうにないなら退部しても良かったのである。

(14)それが3年生になって叶えられそうになったという話に入る。この辺りは思い出を綴っているので、大きな心の動きが見られないようだ。

(15)6月の試合で兄の記録を抜いたことが綴られる。兄はそれほど優秀ではないと思えたというのは、一つの脱幻想の体験だった。

(16)ここに僕の一つの傾向がある。兄の記録を抜いたのを機に、欲が出てきて、もっと引き離そうと試みるが、それは不成功に終わる。目標までは頑張るが、目標が達成されてしまうと、後がないのである。それに続く目標がないのだ。それで無理にでも目標を作るのだけど、そういう目標は脆いものとなる。

(17)目標を達成すると、その後に気力の喪失が生まれる。自分が満たされた後に激しい空虚感が生じるのは口唇期固着のなせる技である。

(18)僕はその空虚感を新たな土俵を設けることで乗り切ろうとしたのだと思う。今度は大学受験で兄を凌ぐということを目指し始めた。一応、これも達成する。

(19)しかし、次の空虚感に対して、僕は対処できないでいる。僕は心理学に活路を見出していく。これは兄とは無縁の活動だった。

(20)高校時代に関するアンビバレントが綴られている。もっとも頑張れた時代であったけど、本当にあれで良かったのだろうかと。ここには一つの洞察があるようだ。大学時代につまずいたのではなく、その前の高校時代が間違っていたかもしれないという洞察だ。これは十分に意識化されていないので、アンビバレントな表現になってしまっているのだと思う。

(21)もっと高校時代を楽しんでもよかったのではないかという後悔が生まれている。そして、当時の毎日がなんと機械的に進行していたかが綴られる。

(22)ここにも一つの洞察が生まれている。当時のような生活は今ではできないけど、当時はできなかったことを今ではやっている。これは何か失ったもの、経験し損ねたものを取り戻そうとする試みであるかもしれないという洞察だ。

(23)一つの結論に至る。結局、高校時代は空虚だったという結論である。

(24)一つの結論に至ったことで、他のテーマが入り込むことになっている。現在の膝の怪我である。この怪我のために高校時代を呪わしく思っているが、それは次の部分で否定されることになる。

(25)高校時代も一つの喪失した時代だったと述べられる。カウンセリングと出会うまでは喪失の連続であったかのように感慨されている。

(26)再び高校時代の回顧になるが、最初の2年も喪失だったと思われている。

(27)しかし、その2年にも意味があったということで、喪失を防ごうとしている。

(28)もっと早くにカウンセリングと出会っていたら、これも希望的観測である。結局のところ、本当に僕が語ろうとしていたのは、自分自身のことであっても、何が正解で何が不正解であるかは分からないし、自分のことでありながら何も確かなことは分からないという発見であるように思う。

(29)この不確かさがさらに語られる。

(30)もっと違った生き方だってあっただろうというところから、結婚した生き方が導かれている。結婚して家族を形成することができる人たちへの憧憬がある。

(31)その人たちが家族や子供のことを話すのを聞いて、今になって、その生が羨ましく感じられている。これは僕の生が間違っていたという意味を暗に含んでいる。

(32)僕はどこかで今からでもやり直せるとは信じていないのだ。それをするには気力がいると感じられているのだ。その気力が失せているように体験されているから、僕には無理だと諦めの境地に立っているわけだ。

(33)子供が生まれたら70歳まで働かないといけないが、働くのはよしとしても、そこまで長生きしないだろうと語られる。喪失感や空虚感に支配されている状態で眺めるので、長い将来が失われたように見えているのかもしれない。

(34)上記のことが見えていないので、この時点での僕はそれがどうしてだか分からないという体験となっている。一方で「人生50年」が理想であるとも考えているが、こちらは合理化しているだけなのかもしれない。

(35)個人の中で体験されている年齢というものがあると僕は思う。自分が30歳だと体験されていれば、その人がたとえ50歳でも、その人は30歳になるのだ。「人生50年」とは客観的な年齢を言うのではないということである。この50年とは象徴としての数字なのである。

(36)ここで前夜の経験が思い出されている。酒を飲む以外に何もないというようなお年寄りたちを見たこと、酒を飲んで空虚しか経験しなかったことなどが綴られ、それが今回の内省録の動機になっている。今回の分が空虚感や喪失感に支配されているのはそのためでもあるようだ。

(37)ここは僕の一つの価値観が現れている。新たな建設よりも、復興に意味を感じる。自分を形成することよりも、自分を形成し直すことに価値を覚える。

(38)再び葛藤が語られる。失ってから人生が始まると一方では述べ、失うことへの抵抗が他方では述べられる。しかし気持ちの上では焼野原から再出発する気持ちであるということが語られる。ある意味では決意であり、信念である。

(39)結局、具体的な体験を綴ることができなかったと、今回の感想が述べられる。この感想は、僕が自分自身をうまく表現できていないという感情からも生まれているのだと思う。

(40)以前の自己対話編に比べて、僕は自分の体験を綴れなくなっているように感じられている。ここにも一つの喪失を僕は見て取ってしまっている。

(41)なぜ観念的な話になってはいけないのか、それは自分を明確にしないからである。ここでは一つの決意が語られ、この内省録の目標を再確認している。

(42)最後はあまりいい自分を経験しない形で終わっている。開始した時よりも悪い状態で終結してしまっている。これの一因として、合理化等の防衛機制がうまく機能していないことが挙げられそうだ。しかし、連想はそれなりに働いているし、いくつかの洞察も得ているようなので、救いもあった。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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