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2017年4月 8日 土曜日

4月8日:長引く治療期間

4月8日(土):長引く治療期間

 今日の午後から月曜日まで、仕事が入っていないので、これを幸いに、室内の整頓を始める。今日と明日の二日間で、いくつかの部分は終わらせようと思う。
 卓上に積み上げられたメモなどの書類も、今日は一つ一つ分類して、処分するものは処分していった。一番古いもので、去年の10月のメモが見つかった。さすがに、放置しすぎだなと、なかば呆れるくらいだった。
 夕方。電話が入る。3,4年前に一度来たという人だった。その名前には薄っすらとではあるが記憶にあったものの、どういう人であったかは思い出せなかった。なんでも、もう一度受けたいと言う。それは構わないけど、明日を要望された時には、ちょっと待ってくれよと思った。
 もし、明日、この人と会おうとするなら、今取り掛かっている作業をすべて中断して、面接のできる状態に戻さなければならない。それはちょっと大仕事だった。それで、別の日にお願いしてもらった次第である。

 しかし、3,4年前に一度だけ来たという人が、もう一度ここに来て何をするつもりだろう。以前、一回で終わった人は今回も一回で終わる可能性が高いと僕は感じている。同様に、以前、継続できた人は今回も継続するだろう。そういうものである。
 もっとも、この3年4年の間にこの人がどうなっているかということも関係してくるので、あまり一概にもそう言えないことではある。
 もし、それがどの「治療者」でもいいけど、きちんと「治療」に入ることができたなら、3年、4年あればその人は十分に「治っている」はずである。ここは一般の人がよく間違えるところである。「心の病」の治療は、一般の人が思うほど長期間を要しないのである。
 例えば、「治療」に10年かかったという患者さんがいるとしよう。この人の事例を詳細に見ていくと、「治療」に入ることができたのは、最後の3,4年だったりする。それまでの6,7年は「治療」に入る前段階のようなものなのだ。
 どうやら説明の順序を間違えたようだ。まず、「治療」の開始と「治療」に入ると言う区別を僕は設けている。そこから話し始めるべきだったな。最初に患者と治療者が会えば、その時点を「治療」の開始と見ることができる。しかし、患者が「治療」に入る、つまり、「治療」に参与するようになるのは、それよりも後になるということなのだ。最初にこの区別を述べておく方が良かったな。

 例えば、僕の歯が痛むとする。虫歯かなと思う。それで歯医者さんに行く。一応、この日を治療開始地点Xとする。
 X初日。歯医者さんは痛み止めの処置をしてくれる。それで痛みが治まる。すると、僕のことだから、当分は歯医者にいかなくてもいいやと思ってしまう。
 それから3か月後(X+3か月)、もう一度そこが痛むようになったとする。僕はその歯医者さんを訪れる。歯医者さんはそこに応急処置をしてくれる。処置をしてくれると、痛みが緩和されたので、僕の足は再び治療から遠のく。
 さらに3か月後(X+6か月)、歯の治療は放置しておくと良くないといった情報を受け取って、不安になった僕は、やはり歯は治療すべきだなどと思い、再度、その歯医者を訪れる。
 ここで治療が始まるかと思いきや、僕の方が多忙になって、なかなか歯医者に時間を割けなくなって、いつしか治療の話はウヤムヤになってしまう。
 半年後(X+1年)、再び歯が痛み始める。僕は治療をウヤムヤにしたことを後悔して、今度こそ治療を続けようと決意して歯医者を訪れる。
 医師は、最初に虫歯の処置をし、その経過を見てから、根本的な治療に入るといった計画を立てる。僕もそれに同意する。
 しかし、処置の段階で、なんやかんやと理由をつけて、僕は歯医者さんから遠のく。治療は終わっていないけど、歯の使用上問題がないので、ついつい問題意識が薄れてしまい、そのままになってしまう。それに、今までと違い、今回は応急処置以上のことをしたという錯覚を起こしているので、すっかりそれに安心しきっている。
 すると、さらにそれから一年後(X+2年)、歯に激しい痛みが走る。僕は歯医者の門戸を叩く。今度こそきちんと治療しますと誓約する。しかし、最初になされる処置は、一年前の処置と同じものである。つまり、この段階では、それは一年前の繰り返しであり、何も前進していないということである。
 ここで治療をきちんとすればいいものを、仕事が忙しくなったとか、時間があれば治療を受けられるんだけどななどと合理化して、再び中断期間が生まれる。
 あまりこの話を引っ張らない方が良さそうだ。今度は2年後(X+4年)ということにしよう。再び歯が痛み始め、今度こそきちんと治療を受けると決意する。
 治療は、最初の一か月(X+4年1か月)は応急処置の段階で、続く2か月で根本的な治療が行われ(X+4年3か月)、最後の一か月(X+4年4か月)で予後を見て、経過が順調で問題もないので、ここで治療を終了しましょうということになる。
 さて、この歯医者のエピソードは架空の話(多少事実が混じっている)だけど、実に4年4か月に渡る治療である。しかし、蓋を開けてみると、治療を受けたのは最後の4か月だけなのである。

 心の病に関しても同じようなことが起きる。「治療」は開始されている。しかし、クライアントは、何度も何度も「治療」の場から逃げようとしたり、何度も何度も肝心なことを回避しようとしたり、何度も何度も臨床家を試そうとしたり、何度も何度も怒りをぶつけては築いてきたものを破壊したりして、そんなことばかりして時間を空費していることも多いのである。治療期間が長いケースでは、必ずそういうことをクライアントがやっている時期が見られるものである。
 さあ、3,4年前に一度来たきりの人がどうなっているか、不謹慎な言い方ではあるが、いささか楽しみでもある。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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