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2016年10月26日 水曜日

10月26日:ミスバカにクスリなしー4『ルーフォック・オルメスの冒険』

10月26日(水):ミステリバカにクスリなし―4
『ルーフォック・オルメスの冒険』(カミ)

 ミステリを新刊で買うことはなくなっていた。でも、本書だけは思わず新刊で購入してしまった。カミですよ、カミ。しかもルーフォック・オルメスものときた。このシリーズ、ミステリマガジンやアンソロジーで何話か読んだことがある。その都度、面白いと思った。こうして一冊本が出されるのは、嬉しい限りだ。
 しかし、一話ずつ読むのなら楽しめるのだけど、34話を一気に読むと、アタマがオカシクなりそうだ。ほんと、キミョーキテレツな登場人物ばかり出てくるのだから。

 ルーフォック・オルメス、ご推察のように、これはシャーロック・ホームズのパロディだ。ホームズ(Holmes)はフランス語読みではオルメスとなるわけだ。でも、本家のシャーロック・ホームズの小説のように、推理によって事実が明るみになるなんてことはない。ヘンテコな推理をオルメスが働かせると、事実がそのヘンテコな推理の方に適合してしまうのだ。そういうツッコミどころ満載の短編集である。

 本書は第1部と第2部に分かれている。第1部では、次々に発生する怪事件をオルメスが解決する。第2部では、オルメスの宿敵である怪人スペクトラとの頭脳戦が描かれる。頭脳戦と言っても、スペクトラが盗みを働き、オルメスが推理してスペクトラを逮捕する。逮捕されたスペクトラはアッというような方法でいとも簡単に脱獄する。そして、また事件を起こし、オルメスによってスペクトラが捕まる。逮捕―脱獄が延々と繰り返される(脱獄が抜けている個所もある)という、何とも人を食ったような展開をするわけだ。
 一話一話解説するのも面倒だし、そんなことをすると、これから読もうとする人の興味を削いでしまいそうだ。とにかく、登場人物もヘンテコなら、事件もヘンテコである。
 自分の体から逃げ出した骨を探してくれと依頼する男や、自分の首つり死体が寝室に吊るされていると訴える男など、不思議な依頼が舞い込む。殺人現場にバカでかい手形を残していった犯人もあれば、虫も殺さない顔をしているくせに完全に証拠を残さない殺人法(それ、よけい手間がかかるだろ)を編み出した「虫も殺さぬ顔の盗賊団」(どんな盗賊だ)の暗躍など、まあ、よくもこんなことが思いつけるものだと感心するばかりだ。
 オルメスの快刀乱麻ぶりに、忠実な助手も保安局長も振り回されっぱなしだ。同じく、読者も振り回されっぱなしである。保安局長の「まったく、オルメスさんは頭がおかしくなってしまったんじゃないだろうか? いきなり。わけのわからん言葉を口走ったかと思うと、列車から降りて、野原をどんどん歩いていく」(「列車強盗事件」)というセリフには、僕も妙に共感してしまった。

 さて、本書の評価だけど、やはり4つ星半は進呈しよう。興味のある方はぜひ手に取って、オルメスの活躍を読んでいただければと思うけど、アタマがオカシクならないよう、くれぐれも一気読みはなさらないように、ご忠言差し上げる。

テキスト
『ルーフォック・オルメスの冒険』(Les Aventures de Loufock-Holmes、1926)カミ著
高野優 訳 創元推理文庫(2016) 301ページ

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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