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2016年7月12日 火曜日

7月12日:7月に入って(2)

7月12日(火):7月に入って(2)

 病院でリハビリを受けている。これがいいなあと思えている。たくさんの患者さんがリハビリを受けている。彼らを見ていると励まされる。一人一人の抱えている病気は異なるけど、みんな自分の課題をこなしている。良くなろうとしている人たち、あるいはこれ以上悪化しないように予防している人たち、みんなが素晴らしく見える。
 入院中に知り合ったおじさんも受けていた。彼もずいぶん回復したなと思う。僕と入れ違いに入院したのだと思う。退院前日に知り合った人だ。気さくで元気なおじさんだ。僕に気づいたかどうかはわからないけど、僕は覚えていた。あの時、まだ車椅子だったおじさんが、今は足を引きずりながらでも松葉杖をついて歩いていた。ああ、あの人も回復してはるんだと思うと、なんだかこちらも気分が良くなってきた。

 膝が曲げられないので、座るよりも立っている方がラクである。電車でも立っている方がいいのだ。でも、親切な人も多くて、席を譲ってくれる人もある。ありがたいことなんだけど、丁重にお断りする。立っている方がラクなんだと言っておく。
 今回、席を譲ってくれた人のことをよく覚えておこうと思う。そして、最近では、電車に乗ると、この人は席を譲ってくれそうだとか、この人は知らんぷりをするだろうとか、そういう予想をして遊んでいる。
 席こそ譲らなかったけど、耳ステレオでシャカシャカ音楽を聴いている金髪の兄ちゃんが、僕を見ると、席を詰めてスペースを空けようとした。兄ちゃん、いい心がけだ。僕は座れないけど、いつか他の人に、本当に困っている人のためにその心がけを取っておいてほしい。

 体力の消耗はハンパじゃない。なにしろ歩くのにも倍の時間がかかるからだ。通常なら20分の距離でも今は40分以上かかる。炎天下でノロノロとしか進めないのもストレスだ。おまけに路面をいつも以上に注意しないといけない。段差とか傾斜、障害物を常に気を付けていないといけない。すごく神経を使う。おまけにスマフォ自転車だ。向こうから気づいてくれることは期待できないから、僕の方から先に気づいて回避しないといけない。そんなこんなで、職場に着くころにはいつもクタクタになる。
 職場の中でも移動はくたびれる。健康な体なら、5冊くらいの本なら一度に運べる。でも、今は1冊ずつしか持てないから、本来なら一度に運べるところを5往復しないといけない。そういうのは本当に疲れる。家でもそういうことがある。一回で済ませられるところのものを何往復もしないといけなかったりする。
 階段も同様。一段ずつしか上り下りできない。倍の時間、倍の労力を要する。

 困るのは食事だ。弁当を買っても、それを持ったまま松葉杖で歩くのは難しそうだ。同じ理由でファストフードのようなセルフで運ぶところも入る気がしない。外食するのでも、隣の席との距離が近いような店は困りものだ。
 結局、何が食べたいよりも、不便そうかどうかで選ぶことになる。

 昨夜、呑兵衛のおじさんに僕はキレた。前々から知っている人なんだけど、昨日はやたらと頭に来たね。
 僕が怪我をしているということでおじさんがイジるのだ。そのおじさんは一度もそういう大きい怪我をしたことがないらしく、まるで怪我をする方がアホだと言わんばかりだった。若いのに何を怪我しているねん、アホかと言うわけだ。
 僕はキレたね。たまたま怪我をすることのなかった人生を送っているだけで、おじさんが偉いわけでもなんでもないんだ。それに、大きい怪我をしたことがないというのは、そのおじさんにとって不幸なことだったと思うね。不便な生活を送り、いろんな人に気にしてもらい、世話をしてもらいながら生きる、そういう経験をすることのないまま70年以上生きてきたのだ。可哀そうなおじさんだと僕は思うね。
 僕個人がバカにされるのは耐えられる。キレたのは、僕の回復のために尽力してくれた人たち、面倒をかけ世話をしてくれた人たち、心配してくれた人たち、そういう人たちに申し訳ないような気持ちに襲われたからだ。ホント、僕があんなおじさんにバカにされるような人間でみんなに申し訳ない。
 僕はそのおじさんのことを聞いて知っている。彼の息子さんが統合失調症なのだ。息子さんも可哀そうだが、この子は父親を恨んでいる。そして彼はいつか息子に殺されると信じて、家族と別れて独り暮らしをしているのだ。息子さんは精神病の診断を受けている。しかし、実の息子から殺されるかもしれないという事態は、息子が精神病だからというだけでなく、彼が父親としてもまともじゃないということではないだろうか。
 僕は思う。それでも息子さんは父親に反抗なんてしなかっただろう。でも、僕は息子さんではない。息子さんはしないことでも、僕はするかもしれない。僕にとって、彼は父親でもなんでもない赤の他人だからだ。彼が僕をバカにするなら、僕は堂々と宣戦布告するだろうし、おじさんと喜んでケンカでもしよう。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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