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2016年6月17日 金曜日

6月17日:手術譚(3)

6月17日(金)手術譚(3)

 手術は無事終了。僕の中では何かをしたとか、何かが終わったといった感覚はなかった。
病室へ戻される。さまざまな管が装着される。まだ麻酔が効いているので何を付けられたのか分からない。20時頃。
寒気はある。でも、あまり布団を上まで被せるわけにはいかない(理由は分からない)という。解熱剤を飲んでもいいが、水分は22時頃まで飲むことができない。どうしますかと看護師に訊かれ、僕は手術の方を優先したいので、22時まで待ちますと答える。
 22時。熱は39度まで上昇。胃や食道を調べて、水分補給の許可が下りる。解熱剤を飲む。何よりも、水がありがたかった。半日以上、水分補給していないので、カラカラだった。

 麻酔が効いている間、僕は妙にハイだった。看護師さんともお喋りをしたりした。その夜の看護師さんを見て、僕は去年来談されていた一人のクライアントさんを思い出した。彼女は准看護師を目指すと言っていたけど、今頃、どうしているかな。
 僕がハイな時には、きっとウラがあると、自分では思っている。後でよく振り返ってみると、手術後の不安をそうして掻き消そうとしていたのだと思い至る。クライアントのことを思い出したのも、どこか、ここに知っている人がいてくれたらなあという思いがあったのだろう。心細かったのだ。手術前よりも、手術後の方を僕は恐れていた。
 手術そのものは麻酔のおかげで何も感じなかったけど、これから麻酔が切れていくと、痛みは回復してくる。僕はどれだけ苦しまないといけなくなるだろう。

 その後、眠れぬまま時間を過ごす。2時頃には、麻酔が切れ、痛みが戻ってきた。3,4時台がピークだった。
 膝の痛みはさほどでもなかった。手術前から痛かった部分だから、あまり変化がなかったように思う。一番ひどかったのは尿道の痛みだ。ここにも管が差し込まれている。ずっと疼くのだ。これが苦しかった。
 もう一つ苦しかったのは、いろんなものが体に装着されているので、身動きが取れないことだった。ちょっとテレビのリモコンを取るのでさえ、届かなかったりするとどうしようもできない。書類画板を使ったり、お箸箱なんかで手元に引き寄せて、それで手に取る。
 3,4時代はとにかく辛かった。医師が来るのが朝9時だと聞いていたから、あと6時間もあるなどと考えてしまう。時間は遅々として進まず。何度も何度も時計を見ては、時間の経たないことに下打ちする。
 痛みをごまかすための手段がない。右手の指先には、酸を調べるためのクリップが挟まれている。こんなの痛くもなんともないし、普段なら何にも感じないだろう。しかし、こんなものまでがストレスを誘発するのだ。装着する指は変えてもいいと言われたので、指を変えてみたり、左手に付けてみたりしたけど、何の気休めにもならない。
 一人部屋なのをいいことに、歌を歌ってみたり、頭の中にある原稿を音読してみたりする。何かをしていると気がまぎれるけど、長くは続けられない。
 そうだ。音楽を聴こう。パソコンは持ってきているし、インターネットにも接続できる状況だから、探せば音楽が見つかるだろう。早速、試みる。ユーチューブにつなぎ、検索して、いろいろ探す。
 昔、よく聴いた曲や愛聴盤をチョイスする。ああ、音楽を聴くというのは正解だった。いろんなことが意識の背景に退く。この時だけは痛みも忘れる。
 しばらく、そうやって聞いていると、パソコンがプッ、プッと音を立てる。あれ、この音、何やったけなと思う。ああ、電源の音だ、バッテリーが切れそうだという時に鳴る音だ。
 僕は慌ててアダプターの先を手繰り寄せる。おお、誰がいつの間にコンセントから外したんだ。僕は身近にあるコンセントに差そうとする。ああ、届かない。動かせる範囲で、できるだけ近づいても、やはり届かない。無念だ。諦めざるを得ない。

 時刻は5時頃。音楽の手段は潰えたが、この時間からはテレビが始まる。それと、痛みに慣れてきたのか、幾分、ましになった感じがしている。ただ、寝ようとすると寝られない。尿道が疼くし、痛いし、尿が流れるたびに不快感がこみ上げる。
 一睡もできないまま朝を迎える。朝を迎えてからがまた長かった。8時に朝食が来る。とても食べるどころではなかった。前日の朝以来、何も食べていないから、空腹ではあった。しかし、管がいっぱい装着されていて、身動きも取れなくて、そんな状態でとても食べる気にはならなかった。
 9時に主治医が来る。状況を説明する。じゃあ、外しましょうと言われた時には天にも昇る気持ちだった。後で看護師さんたちが来ることになった。ああ、ここでも待たされるのか。
 でも、看護師さんたちが来てくれた時は、本当に救われた思いだった。尿道の管を外す時に痛みが走ったものの、これが最後の痛みだと思うと、苦でもなかった。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)



投稿者 高槻カウンセリングセンター

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