<Q007>カウンセリングを受けたいけど時間が取れない

<Q007>「カウンセリングを受けたいけれど時間がない」

<状況と背景>
 主に初めての問い合わせの際に聞くセリフです。
 どのクライアントであれ、カウンセリングを受けたいという気持ちと受けたくないという気持ちの両方を抱えていると私は想定しています。受けたい気持ちの方が強い人が現実に訪れてくれているのだろうと思います。ただ、両者が等価で、尚且つ、それらが同時に表明される時、「カウンセリングは受けたいけれど、その時間がない」という、いわばプラスとマイナスを同時に言うような表現になってしまうのでしょう。

<A>
 これに対して、私は「それは困りましたね」としか言いようがありません。その人に時間がないということであれば、それはその人の責任で時間を作っていただくしかないのです。これはその人の私生活の領域なので、私が関与できる事柄ではないのです。
 しかし、困るのは、「それで私にどうして欲しいのですか」と尋ねると、「どうにかしてほしい」と答えられてしまう状況です。その人に時間がないということは分かるのですが、その上で私にどうして欲しいのかという希望を言える人は少ないものです。だから、私もどうしていいのやら困り果てるのです。
 確かに、私たちの人生には時間の制約があります。いろんなことをしたいと思っていても、それをすべてやるだけの時間が私の人生には用意されていないかもしれません。大部分は時間不足のためにできないまま終わるでしょう。
 時間に制約があるから、私たちは必要なことを選択しなければならないのです。この質問者に対して、私はその選択をしてほしいと願います。

<補足と説明>
 あくまで私の個人的な経験から言うのですが、「時間がないのでできない」という理由は、それができない理由としては不十分だと考えています。こうした理由づけは、その人が成長していく過程において、どこかで身に付けたやり方だと思います。この理由が通用してきた環境がその人にはあったのだと思います。
 私も「忙しくてできなかった」という言い訳をついついしてしまうのですが、後から考えて、いつも自分が恥ずかしくなるのです。確かに忙しかったかもしれないけれど、果たして、それをやってみようとしたかと問われると、何とも答えられないのです。どこかで自分をごまかしているような後味の悪さが残る体験です。
 そして、私自身を振り返ってみても、時間がなくてできないと言って、どれだけのことをしないままできただろうかと思うのです。この質問者も私と同じように後悔の多い人生を送っておられるのかもしれません。
 もし、あなたが「カウンセリングは受けたいけれど、その時間がない」とお考えであれば、私は次のように申し上げたく思います。まず、その時間はあなたの生活上の時間であるので、私が踏み込む領域ではないということです。そして考えてほしいのは、あなたが言っていることは、単に時間だけの問題なのか、それとも後悔の多い生き方のことなのかということなのです。もしかすると、あなたも「時間がなくて」という理由で、多くのことを体験し損ねている人かもしれません。もう一度、その辺りのことを考えてみてほしいと願います。
 先述のように、私たちは限られた時間を生きています。時間がないからできないと言って処理した事柄もたくさんあります。その中には「やっぱり、あの時、無理をしてでもやっておいたら良かった」と後になって思う事柄もけっこうあるかもしれません。私たちは時間がないからできないという言い訳をして、常に後悔の種を増やしながら生きているのかもしれませんね。

<付記>
 以前、このQ&Aを読まれた方から反論をされたことがあります。その人は本当に時間がないのかもしれないと、私はある人から反論されました。
 つまり、その人の言い分では、カウンセリングを必要としている人の中にはいわゆるブラック企業に属している人も多いだろうから、そういう人たちは本当に時間が取れないのだということでした。
 確かにそうでしょう。この場合、問題となるのは、ブラック企業に勤めているから時間が取れないということではなくて、その人の順応主義こそが問題になっているということなのです。個人的には、そんな他人の企業なんて放っておいて、カウンセリングを受けに来なさいと申し上げたいところなのですが、そのような人はこれをすごい罪ある行為だと感じるようであります。
 いずれにしても「受けたいけど時間がない」という訴えや感情は、別種の問題を表現していることに変わりはないように私は思うのです。
 つまり、質問者はカウンセリングを受けたいけど時間が取れない、だから私にどうして欲しいのですかという部分をきちんと言えないという点に質問者の抱える困難があるのだと思います。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)